読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

aoi_tomoyuki's blog

その時書きたかったこと書いてます。

【夏休み特別企画】納涼フェスティバル参加。

novelcluster.hatenablog.jp


 参加します。二つか三つ書きます。
 2008年頃から毎年、てのひら怪談に出すために怪談を書いてたんですけど、最近は開催しなくなっちゃったんですよね。だから、怪談を書きたくてウズウズしてたので、怪談欲求を満たすべく参加。
 とりあえず、ディスクの奥底に眠ってた怪談を発掘したので手直ししてペタリ。確かどこかに出そうと思って書いてたんだけど、テーマが合わずに没になったやつ。


カナちゃん

 私は一人っ子だった。幼い頃、妹が欲しくてたまらない時期があり、毎日のように両親におねだりをしていた。七夕、クリスマス、初詣など、機会がある度にお願いしていた。しかし、妹が生まれることはなかった。
 仕方ないので、私は人形を妹代わりにしていた。お風呂で遊べる人形で、お湯をかけると髪の色が変わるのが特徴だった。私はカナちゃんと呼んでいた。お風呂に限らず、毎日遊んでいた。色々なことを話して聞かせたり、ごっこ遊びなどもした。両親が心配するほど、私はカナちゃんにのめりこんでいた。
 しかし、小学校へ入学すると、友達と遊ぶ機会が増え、妹の代わりは不要になっていった。カナちゃんはいつも遊んで欲しそうにしていたが、学年を重ねるにつれ、定期的に手入れをする以外、触ることもなくなった。それでも、カナちゃんは私が手入れする度に、嬉しそうに笑ってくれた。

 二十代最後の歳に私は結婚をした。式は色々な都合で先になるのだが、新居はすでに決まっていて、荷造りも済んでいた。
 引越しの前日、私は一日中家ですごしていた。生家に別れを告げるので、少し感傷的になっていた。夕食後、自分の部屋でごろごろしていると、カナちゃんと目があった。昔、妹代わりだった人形。私はカナちゃんと一緒にお風呂へ入った。
「私、結婚したんだ。明日、家を出るの」
 私は身体を洗いながら、カナちゃんに話しかけた。
 返事はなかったが、カナちゃんは私をじっと見ていた。一緒に行きたい、と訴えているようだった。
「ごめんね。連れていけないんだ」
 私はカナちゃんにシャワーをかけた。髪の毛が濃いピンク色に変わるはずだった。
 すうっと髪から色が抜け落ちた。真っ白になった。そして、シャワーの水流でカナちゃんの白髪が次々に抜けていった。すぐに髪の毛はなくなった。ハゲ頭になってしまった。
 私は悟った。もうカナちゃんはどこにもいない。
「ああ……ごめんね、カナちゃん……」
 私は抜け殻を胸に抱いて泣いた。