aoi_tomoyuki's blog

その時書きたかったこと書いてます。

百合乙女「アンコク料理?」

お姉さま「ええ、アンコク料理」
百合乙女「アンコク? あんこう料理じゃなくて?」
お姉さま「あんこうじゃなくてアンコクよ」
百合乙女「アンコクって何ですか?」
お姉さま「アンコクはアンコク以外のなにものでもないわ」
百合乙女「いや、さっぱりわかりません。暗いって意味の暗黒ですか?」
お姉さま「さあ、どうかしら」
百合乙女「ぶー! 自分で話題振っておいて、何ですっとぼけるんですか」
お姉さま「だって、答えを知ってたら面白くないでしょう」
百合乙女「面白くないって、どういうことですか?」
お姉さま「だから、アンコク料理を食べに行きましょう、ってこと」
百合乙女「いつですか?」
お姉さま「今夜よ」
百合乙女「え、今夜ですか? ずいぶんと急な話ですね」
お姉さま「仕方ないわ。アンコク料理だから」
百合乙女「意味不明です」
お姉さま「細かいことは気にしないの。今夜、予定あいてるわよね?」
百合乙女「そんな、いきなり誘うなんて、心の準備が……ポッ」
お姉さま「どうして赤くなるの。アンコク料理を食べに行くだけよ」
百合乙女「むしろ空気読んで押し倒す計画立てくださいよ!」
お姉さま「…………」
百合乙女「あの」
お姉さま「……」
百合乙女「そこまで嫌そうな顔しなくても……」
お姉さま「そんなことないわよ。めんどくさいって思っただけ」
百合乙女「私、傷つきました」
お姉さま「行きたくないの?」
百合乙女「いや、そんなことはないですけど……」
お姉さま「じゃあ決定ね。今夜、迎えに行くから」
百合乙女「だけど、危なくないですか。最近この辺で女の子が行方不明になったとかそういう話もありますし」
お姉さま「大丈夫よ。タクシー使っていくから、危ないことなんてないわ」
百合乙女「私、お金ないです」
お姉さま「それも大丈夫。私がおごるから」
百合乙女「まあ、そこまで言うなら」


−−−夜


百合乙女「あの……」
お姉さま「なに?」
百合乙女「ここですか?」
お姉さま「そうよ」
百合乙女「すごい高そうでオシャレな感じがムンムンする店ですけど……」
お姉さま「そうね」
百合乙女「私、普段着なんですけど。場違いじゃないですか」
お姉さま「私だって同じよ。だけど、今回に限っては問題ないわ」
百合乙女「なんでですか」
お姉さま「だって、アンコク料理だもの」
百合乙女「なんか説明になってませんよ」
お姉さま「いいから行きましょう」





百合乙女「あの、店の中が真っ暗でなにも見えないんですけど……」
お姉さま「そういうものだから」
百合乙女「え?」
お姉さま「さ、行くわよ」
百合乙女「あの、ひょっとして、これって……」
店員  「いらっしゃいませ」
百合乙女「うわあっ、びっくりした」
お姉さま「なに大きな声出してるのよ。恥ずかしいわね」
店員  「本日は招待のお客様のみとなっております。招待状をお持ちですか?」
お姉さま「ええ、これでいいかしら?」
店員  「拝見します……。確認しました。では、こちらへどうぞ」
百合乙女「お姉さま、いつの間に招待状なんて」
お姉さま「まあ、いいじゃないの。いろいろあるのよ」
百合乙女「むぅ……それにしても、こちらへって言ったわりに真っ暗なんですけど」
お姉さま「よく見なさい。うっすらと目印があるでしょう」
百合乙女「あ、ホントだ。お姉さまよく気づきましたね」
お姉さま「だって、初めてじゃないもの」
百合乙女「今のもう一回いってください。できれば恥じらう感じで」
お姉さま「は?」
百合乙女「だから、もっと恥じらう」
お姉さま「……」
百合乙女「いえ、なんでもありません」





お姉さま「さ、座りましょう。すぐに料理がくるわ」
百合乙女「あの、この暗いまま食べるんですか?」
お姉さま「そうよ」
百合乙女「ひょっとして、暗い中で食べるから、アンコク料理なんですか?」
お姉さま「ふふっ、さあどうかしら」
百合乙女「それだけじゃないってことですか?」
お姉さま「そんなに焦らないで楽しみましょう」





店員  「お待たせいたしました。まずはこちらからどうぞ」
百合乙女「こちらからって言われても見えないんですけどね」
お姉さま「そういうものなのよ。これから先も明かりはつかないわ」
百合乙女「もしかして、これはアレですか。闇鍋ですか」
お姉さま「そうね。似てるかもしれないわね」
店員  「では、私共で料理を一口サイズに切り分けますので、お客様は口を開けてお待ちください」
百合乙女「ええっ、それはちょっと恥ずかしくないですか」
お姉さま「すぐに慣れるわ」
百合乙女「こういうのは、赤の他人じゃなくて、好きな人にやってもらうと嬉しいのに」
お姉さま「はいはい。早く口を開けなさい」
百合乙女「ひどい……」

百合乙女「あーん。いつでもどうぞ」
店員  「それでは」

ぱくっ

百合乙女「ん? なんだろこれ。甘い……」

ぱくっ

百合乙女「和風な甘さ……あ、もしかして、これあんこですか」
お姉さま「ふふっ……」
百合乙女「いや、これあんこですよ。絶対あんこ」

百合乙女「ん? あんこ?」
百合乙女「アンコク料理」
百合乙女「あんこく料理……あんこ、あんこ、あんこ食う料理」
百合乙女「あああああああああああああ!」
お姉さま「こら、大きな声出さないの」
百合乙女「お姉さま、まさか、まさか、これはダジャレですか」
お姉さま「ふふふっ、そうかもしれないわね」
百合乙女「ええー……ホントにダジャレなんですか」
お姉さま「ガッカリしてるの?」
百合乙女「ガッカリですよ!」
お姉さま「まだ早いわよ」
百合乙女「まだあるってことですか?」
お姉さま「これで終わりだったら何度も食べようなんて思わないわよ」
百合乙女「それもそうですね」





店員  「お待たせしました。続いての一皿になります」

ぱくっ

百合乙女「……甘酸っぱい」

ぱくっ

百合乙女「この食感は……魚?」
お姉さま「魚といっても色々いるわよ」
百合乙女「私は魚の専門家じゃないんだから、食べただけで魚の種類なんて分かりませんよ」

ぱくっ

百合乙女「うーん、アンコク料理で魚……。アンコク、魚。アンコク……」
百合乙女「あ」
お姉さま「分かったの?」
百合乙女「もしかして、これあんこうですか?」
お姉さま「正解」
百合乙女「……」
お姉さま「美味しいでしょう?」
百合乙女「そりゃあ、まあ、美味しいですけど……私はダジャレ料理を食べるために連れてこられたんですか」
お姉さま「ふふっ、本番はこれからよ。それを食べるために来たんだから」
百合乙女「まあ、期待しておきます」




店員  「お待たせしました。本日のメインディッシュになります」
百合乙女「またダジャレなんですか」
お姉さま「いいから食べましょう」

ぱくっ

百合乙女「んー……肉?」
お姉さま「……」
百合乙女「なんの肉だろ……今まで食べたことない、不思議な感じ」
お姉さま「……」
百合乙女「うーん、なんだろう。鳥っぽいのかな。えーっと、鳥でダジャレっていうと……アンコク、アンコク、あんこく」
お姉さま「……」
百合乙女「あ、インコ! インコ食う料理!」
お姉さま「……」
百合乙女「お姉さま?」
お姉さま「え? あ、ごめんなさい。食べるのに夢中で気づかなかったわ」
百合乙女「そんなに美味しいですか?」
お姉さま「ええ、病みつきになるぐらい」
百合乙女「ところで、これってインコですか?」
お姉さま「インコ? どうしてそうなるの?」
百合乙女「え、ダジャレでアンコクにかけてインコ食う……」
お姉さま「……それはちょっと」
百合乙女「あれ、違うんですか?」
お姉さま「もう少し食べてみたら?」
百合乙女「それもそうですね」

ぱくっ

百合乙女「丸っこくて、なんかぐにゃぐにゃしてる……。え、え、これ肉じゃない」
お姉さま「羨ましい。そこ美味しいところなのよね」
百合乙女「え、部位なんですか?」
お姉さま「ふふふ」
百合乙女「むぅー、教えて下さいよ」
お姉さま「教えたら面白くないでしょう」
百合乙女「もう自分で考えます」

ぱくっ

百合乙女「うぅ……ツルツルでうにゅうにゅで、なんか、生っぽい」
お姉さま「慣れるとそれが美味しくなるのよ」
百合乙女「そんなもんですかね。それにしても、ますますわけが分からなくなりました」
お姉さま「難しいことは考えずに楽しんで食べればいいのよ」
百合乙女「そうですね……。そうします」

ぱくっ

百合乙女「あ、これレバーっぽい」

ぱくっ

百合乙女「これは細長くてコリコリしてる」





お姉さま「さて、帰りましょうか」
百合乙女「お店の人と何話してたんですか」
お姉さま「秘密」
百合乙女「むぅー」
お姉さま「どうしたの?」
百合乙女「なんだかスッキリしません」
お姉さま「そう? でも、美味しかったわよね?」
百合乙女「そりゃあ、まあ、今までにない味で、すごい美味しかったですけど……」
お姉さま「機会があったらまた食べたい?」
百合乙女「食べたいですけど……」
お姉さま「それならいいじゃない。帰りましょう。そこにタクシーを待たせてあるわ」
百合乙女「うーん、やっぱり気になる。アレ……なんだったんですか?」
お姉さま「気にしたらダメよ。美味しかったんだからそれでいいの」
百合乙女「モヤモヤする」
お姉さま「あら」
百合乙女「どうしたんですか?」
お姉さま「ほら、この間の女の子が突然失踪した事件の」
百合乙女「目撃情報を求めるチラシですね。誘拐って噂ですけど……」
お姉さま「怖いわね」
百合乙女「怖いですね」
お姉さま「見つかるといいわね」
百合乙女「そうですね」
お姉さま「帰りましょう」
百合乙女「はあ……気になる……」


『この子を探しています。情報をお寄せください。氏名:高木杏子(たかぎあんこ)(12)』