aoi_tomoyuki's blog

その時書きたかったこと書いてます。

百合乙女「お姉さま、最近、この辺りで口裂け女が出るらしいですよ」

お姉さま「口裂け女っていうと、都市伝説のアレ?」
百合乙女「そうです。口が耳までがばーって裂けているアレな人のことです」
お姉さま「出たってことは、誰か見た人がいるの?」
百合乙女「私の友達だった子が見ました」
お姉さま「友達だった? どうして過去形なの」
百合乙女「聞きたいですか?」
お姉さま「聞きたいような、聞きたくないような……」
百合乙女「何で迷うんですか。聞きたくないんですか?」
お姉さま「興味のある話題ランキング29位ってところかしら」
百合乙女「低っ! もっと興味を持ってくださいよ」
お姉さま「そんなことより、18位のサメの話をしましょう」
百合乙女「サメって! 今の流れで、どうしてサメなんですか!」
お姉さま「サメバナは乙女のたしなみよ」
百合乙女「そんな単語初めて聞きましたよ!」
お姉さま「覚えておいて損はないわ」
百合乙女「覚えました。だから話を聞いてください」
お姉さま「仕方ないわね」
百合乙女「あれは一週間ほど前になります」
お姉さま「一週間前というと」
百合乙女「いいから黙って聞いてください」
お姉さま「ごめんなさい」
百合乙女「私のケータイに電話がかかってきました。その子は、私とはそれほど親しくなくて、電話なんて一度もしたことがありませんでした」
百合乙女「どうしたのか聞くと、その子は『口裂け女が出た!』って言うんです」
お姉さま「普通、そういうのは、親しい友達に言うんじゃないかしら」
百合乙女「はい。でも、その子は私に電話してきたんです。なぜかと言うと、私にしか電話できない理由があったんです」
お姉さま「それは?」
百合乙女「ケータイを落としてしまったらしく、私の番号しか覚えていなかったからです」
お姉さま「ああ……あなたの番号覚えやすかったわね」
百合乙女「そんなにがっかりしないでください。落としてしまった理由が問題なんです」
百合乙女「さっきも言ったとおり、その子……A子とでもしましょうか。Aは口裂け女を見たんです」
お姉さま「なんで仮名にするのよ」
百合乙女「その方が、それっぽいじゃないですか」
お姉さま「まあ、いいわ。続けて」
百合乙女「部活が終わって、Aは一人で帰っていました。時刻は夕方、あたりが夕闇に包まれ始めている時間、ちょうど今ぐらいです」
百合乙女「Aは電車通学なので、毎日駅まで歩いています。川沿いの土手の道を一人で歩いていると、前から女の人が歩いてきました」
お姉さま「どんな女だったの?」
百合乙女「冬でもないのに、真っ赤なコートを着ていたんです」
お姉さま「身長は?」
百合乙女「そうですね。ちょうどお姉さまぐらいです」
お姉さま「そう。じゃあ、髪の毛の長さは?」
百合乙女「そうですね。ちょうど……お姉さまぐらいの、黒髪のロングです」
お姉さま「他にどんな特徴があったの?」
百合乙女「ええと、その、それが」
お姉さま「どうしたの?」
百合乙女「顔が半分ぐらい隠れる大きなマスクしてたんです。…………今のお姉さまみたいに」
お姉さま「ふぅん」
百合乙女「今更ですけど、どうしてマスクしてるんですか?」
お姉さま「風邪ひいたのよ」
百合乙女「そうですか。ところで、かばんから、赤い布がはみ出てるんですけど」
お姉さま「これはコートよ。お気に入りなの」
百合乙女「い、今、夏ですよ……」
お姉さま「いいじゃない。夏に冬用のコート着たって」
百合乙女「マスクとってもらっていいですか?」
お姉さま「ダメよ。まだ、話の続きを聞いてないわ」
百合乙女「え、それどういう意味ですか」
お姉さま「いいから」
百合乙女「ええと、Aは土手の道を歩いていて、だんだんと真っ赤なコートの女との距離が縮まりました。あと三メートルのところで、女が立ち止まりました」
百合乙女「女はAに向かって言いました。『わたしキレイ?』同時に、巨大なマスクをとると、口が耳まで裂けていたんです」
お姉さま「定番ね。それから?」
百合乙女「Aは気絶してしまいました。気がついたら、夜になっていて、駅の近くで倒れていたそうです」
お姉さま「ケガはなかったの?」
百合乙女「はい。ただ、ケータイを落としてしまったらしく」
お姉さま「それで、番号を覚えてるあなたにしか電話がかけられなかったと言うわけね」
百合乙女「はい。それで、Aは私にそのことを話していたんですけど、家の電話からかけてきたらしいんです」
百合乙女「話の途中で、玄関のインターフォンが鳴る音が聞こえて、そのまま、電話口に戻ってくることはありませんでした」
お姉さま「なにがあったの?」
百合乙女「殺されてしまったらしいんです。何者かに」
お姉さま「それで『友達だった』と過去形になったのね」
百合乙女「はい。それから気になることが一つあるんです」
お姉さま「どんなこと?」
百合乙女「Aはケータイを握りしめたまま死んでいたらしいんです。ケータイを落としたのに」
お姉さま「返しに来たんじゃないかしら」
百合乙女「え?」
お姉さま「だから、その口裂け女がAにケータイを返しにきたってこと」
百合乙女「そんな、じゃあ、口裂け女がAを殺したって言いたいんですか?」
お姉さま「そう考えるのが妥当じゃない」
百合乙女「おかしいですよ。ケータイを届けるほど親切な口裂け女が殺すなんて」
お姉さま「そうかしら? ケータイを届けることと、殺すことは別よ」
百合乙女「意味が分かりません」
お姉さま「口裂け女は聞きたかったのよ」
百合乙女「なにをですか?」
お姉さま「『わたしキレイ?』」
百合乙女「え……そんなこと」
お姉さま「だって、答え聞く前に気絶しちゃったんでしょう?」
百合乙女「そうですけど」
お姉さま「それなら、もう一度質問の答えを聞くついでに、ケータイを届けたっておかしくないわ」
百合乙女「じゃあ、Aは口裂け女からケータイを受け取って、また質問されて……」
お姉さま「ブスとでも答えて、殺されたんじゃないかしら」
百合乙女「やめてください。変なこと言わないで」
お姉さま「変なこと? 事実よ」
百合乙女「なんでお姉さまがそんなこと知ってるんですか!」
お姉さま「知りたい? 興味のある話題ランキング何位ぐらい?」
百合乙女「ふざけないでください!」
お姉さま「ところで、私の興味ある話題ランキング1位を知りたくない?」
百合乙女「なにを言ってるんですか」
お姉さま「1位は」
百合乙女「だから!」
お姉さま「私がキレイなのかどうか」
百合乙女「え……」
お姉さま「わたしキレイ?」



 お姉さまはマスクを外した…………。