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aoi_tomoyuki's blog

その時書きたかったこと書いてます。

百合乙女「お姉さま、最近この辺りに吸血鬼が出るそうですよ」

お姉さま「吸血鬼って、十字架とかニンニクが嫌いなアレのこと?」
百合乙女「そうです。そのアレな吸血鬼です」
お姉さま「吸血鬼はフィクションでしょう?」
百合乙女「ノンフィクションだから、お姉さまとの甘いひと時に、こうして話題にしてるんじゃないですか」
お姉さま「そんなに甘くなかったと思うけど」
百合乙女「ひ、ひどい……」
お姉さま「それで、吸血鬼を誰か見たの?」
百合乙女「はい。先週のことです。可愛らしい乙女が夜道を歩いていました。突然、暗がりからビックリするほどの美形の男が現れたんです!」
お姉さま「その美形の男が吸血鬼なの?」
百合乙女「そうです。その美形の男が近づいてくるんです。そして、いきなり、ぶちゅうううううううううううううって唇を奪うんです!」
お姉さま「ねえそれって」
百合乙女「まあ最後まで聞いてください。美形の激しいキスによって、ピュアな乙女はウットリしちゃうんです。骨までフニャフニャになって、『もうどうにでもして!』って感じになるんです」
お姉さま「いくら美形とはいえ、普通、キスだけでそんなにメロメロになるのかしら?」
百合乙女「私はなりますよ。その……お姉さまと……ポッ」
お姉さま「ふぅん。私はならないけど」
百合乙女「ひ、ひどい……ひどすぎる」
お姉さま「それで続きは?」
百合乙女「……メロメロになったところで、首筋をがぶっと噛まれて血を吸われちゃうんです」
お姉さま「ふぅん」
百合乙女「もうちょっと興味を持ってくださいよ! もっと優しくしてくれないと、私、泣きますよ!」
お姉さま「だって、それただの変質者でしょう?」
百合乙女「変質者じゃないです」
お姉さま「理由があるの?」
百合乙女「だって、ビックリするほどの美形が変質者なわけないじゃないですか。変質者っていうのは、自分の醜さに絶望して性癖がねじ曲がった人なんですよ」
お姉さま「ひどい暴言ね……」
百合乙女「真実です」
お姉さま「まあ、仮にその美形が変質者じゃないとして、吸血鬼かどうか分からないじゃない」
百合乙女「分かりますよ。吸血鬼の目撃者の乙女は、お昼ごはんにニンニクのたっぷり入ったギョウザを食べたらしいんです。それで、ぶちゅううううううううううううううってされた瞬間、吸血鬼が顔を歪めて逃げていったんです!」
お姉さま「それは……まぁ、逃げるんじゃないかしら」
百合乙女「そうです! 吸血鬼だからニンニクを恐れて逃げていったんです!」
お姉さま「なんでそんな解釈になるのよ! 口が臭かったから逃げていったんでしょう」
百合乙女「いやいや、いきなりキスするような変質者なら、それはそれでご褒美じゃないですか」
お姉さま「意味が分からないわよ!」
百合乙女「お姉さまには分からない世界もあるんですよ」
お姉さま「そんな世界知りたくもないわ」
百合乙女「むしろ知らなくていいです。お姉さまのそういうピュアなところが胸キュンポイントなのです!」
お姉さま「私、褒められてるの……?」
百合乙女「YES!」
お姉さま「あ、ありがとう……。それで、その吸血鬼は誰が見たの?」
百合乙女「友達のお姉さん」
お姉さま「あら意外と近いところにいる人ね」
百合乙女「違います。友達のお姉さんの彼氏の妹が好きな人のお姉さんです」
お姉さま「どこの誰なのよ……」
百合乙女「まあ、お姉さまの隣のクラスの人なんですけどね」
お姉さま「あのねえ」
百合乙女「どうかしたんですか?」
お姉さま「なんで話をややこしくするのよ」
百合乙女「世の中は狭いですねえ、って話をしようと思ったんですけど」
お姉さま「本題を置き去りにして、世の中の狭さを話題にする必要ある?」
百合乙女「いやぁ、私、そこまで考えてしゃべってないです」
お姉さま「そうね。あなたにそういうところを期待する方が間違ってるわね」
百合乙女「私、褒められてます?」
お姉さま「NO」
百合乙女「ひ、ひどい……」
お姉さま「それで、どこまで話したかしら?」
百合乙女「知りません」
お姉さま「どうしたの?」
百合乙女「お姉さまの度重なるひどい扱いに、私の心はポッキリ折れてしまいました。私は傷つきました」
お姉さま「あら、それは大変ね。病院にでも行ってきたら?」
百合乙女「今日のお姉さまはいろいろ雑すぎます。手抜きです。私、本当に泣きますよ……」
お姉さま「よしよし」
百合乙女「ふぇっ」
お姉さま「いい子いい子」
百合乙女「あ、あ、あ、あ、あ、頭なんて撫でたって、私の傷ついた心を癒すことなんてできないんですからね!」
お姉さま「はいはい。世話の焼ける子ね。ぎゅうっ」
百合乙女「そ、そ、そ、そんなハグしたぐらいで、ふぁ……私を思う通りにできると思ったら、あぅ……その、大間違いなんですからね……」
お姉さま「はい、おしまい」
百合乙女「あっ……うぅ」
お姉さま「どうしたの? 不満そうな顔ね」
百合乙女「べ、別に、不満なんかじゃ……」
お姉さま「そう。じゃあ帰りましょう」
百合乙女「えっ」
お姉さま「どうしたの? まだ何かして欲しいの?」
百合乙女「その……もっと」
お姉さま「もっとなに?」
百合乙女「あの……」
お姉さま「なあに?」
百合乙女「だから、その、もっとぎゅってしてくださいって言ってるんです!」
お姉さま「よくできました」
百合乙女「うぅ……恥ずかしい」
お姉さま「じゃあ行きましょうか」
百合乙女「どこへですか?」
お姉さま「ひとけのないところ」
百合乙女「ええっ、あ、ちょっと、ひっぱらないでください」
お姉さま「そういえば、何の話をしてたかしら?」
百合乙女「もう、どうでもいいです……ポッ」


お姉さま「この辺りなら大丈夫かしら」
百合乙女「本当にひとけがないですね……」
お姉さま「さてと、そろそろ始めましょう」
百合乙女「きゃっ……お姉さま強引すぎます」
お姉さま「ふふふ、たまにはね」
百合乙女「あっ……お姉さま、それ」
お姉さま「それ?」
百合乙女「首筋に傷が……注射の痕みたいな」
お姉さま「え? ああ、ただの虫さされよ」
百合乙女「でも、傷が二つ並んで……」
お姉さま「虫さされよ。虫さされ」
百合乙女「本当に虫さされですか?」
お姉さま「もう、今はそんなことどうでもいいでしょう?」
百合乙女「あの……何か忘れてるような」
お姉さま「忘れなさい」


ぶちゅぅうううううううううううううううううううううううううううううううううう


百合乙女「んんっ……んぁ、ん……」
百合乙女(もうどうにでもして……)
お姉さま「んんんんんんっ!!!」
百合乙女「……お姉さま?」
お姉さま「うぐっ!!!」
百合乙女「え、ちょっと、まって、どこ行くんですか!」


百合乙女「行っちゃった……」
百合乙女「口元押さえてたけど、どうしたんだろ?」
百合乙女「あっ!!」
百合乙女「お昼にニンニクたっぷり餃子食べたんだった」
百合乙女「うぅ……そんなに臭かったのかな……」
百合乙女「ブレスケア山ほど食べたのに」
百合乙女「あれ、口の中が血の味がする。なんでだろう。気のせいかな」


百合乙女(これ以来、お姉さまとのデートは夜ばかりになった。そして、お姉さまはやたらとトマトジュースを飲むようになり、ときどき、物欲しそうに私の首の辺りを見ていた)